2010年9月25日土曜日

公園遊具:ふたたびタコ山足立区起源説


| shimo shinmei | jun. 2010 |

読売新聞の記事を見逃していました。タコ滑り台誕生の経緯について、かなり詳しく書かれています。

取材先は前田屋外美術(前田環境美術)で遊具制作にたずさわっていた工藤健氏と長久保明氏。両氏の写真も掲載されています。そしてだれが「石の山」に頭をつけさせたのかといえば、やはり足立区役所のお偉いさんということになっています。

記事のきっかけは神明児童遊園のタコの取り壊し。その神明児童遊園のタコについては「全国に約200基あると言われるタコ滑り台の中でも、最も古いもののひとつ」と曖昧な表現。




[東京の記憶]タコ滑り台 頭付けたら引っ張りだこ
抽象芸術変えた思わぬ一言

『読売新聞』2008年4月7日、朝刊27頁。

品川区の「神明児童遊園」。だが、子供たちはだれも本当の名前で呼ばなかった。「タコ公園」。公園の中央に幅10メートル、高さ4・5メートルの真っ赤なタコの滑り台があったからだ。
てっぺんにある赤く丸い頭から、地面に根を張るようにくねくねした長い足が伸びる。つるつるしたその足で時折、滑りそうになりながら、子供たちがきゃっきゃっとはしゃぎ声を上げてよじ登る。1968年にこの公園に現れたタコは、広末涼子さんが出演したCMにも登場した子供たちのアイドル。今や全国に約200基あると言われるタコ滑り台の中でも、最も古いもののひとつだ。
でも、いったいなぜ滑り台がタコなのか。緑あふれる公園の真ん中で、海の生き物形の遊具がどんと構えているのも変な話なのに。
渋谷区にある建設会社「前田環境美術」。この会社は、全国にあるタコ滑り台の生まれ故郷だ。
東京五輪を前に日本中がわいていた60年代初頭。都内では緑のある公園が次々と造られていた。そんなころ、同社の前身の会社も新規事業として遊具製作に乗り出す。
ところが同社には遊具のデザインや製作をする人がいなかった。「そこで当時の社長が東京芸大彫刻科で学ぶ芸術家の卵を何人かスカウトしてきたんです」。同社の参事で、卵たちのひとりだった長久保明さん(67)は話す。
「子供たちの想像力を刺激してやろうじゃないか」。粘土をこね続けたあげく、長久保さんらは、複数の曲線が組み合わさった、一見、何だか分からない形の滑り台を作り上げた。そう、まるで箱根の「彫刻の森美術館」に並ぶヘンリー・ムーア作品のような。
「当時の彫刻界では抽象形が大きな潮流だったので、どこか影響されていたのかも」。学生のリーダーだった彫刻家の工藤健さん(70)は振り返る。
「石の山」と名付けたこの滑り台の模型を手に、学生らは区役所などを営業して回り、いくつかの公園で採用されて、自信満々だった。
ところが、その鼻がポキリと折られてしまう。足立区役所を訪ねた時のことだ。若い職員は「ぜひ作りましょう」と乗り気。さあ正式に図面を、という段階になって、ひとりの幹部が口をはさんだ。「これじゃあ何だか分からんなあ。そうだ、頭を付けてタコにするか」
「なんてこった」。それでもせっかく取れた契約。工藤さんらは渋々、頭を付けた「石の山」を作った。だが、そんな思いに反して「ぜひうちにも」と、他の役所からも注文が次々と寄せられる。当の足立区には、結局10基も作られた。
「なんで、と思いながら公園に行ってみると、子供たちが大喜びしている。やっぱり子供たちが楽しんでくれるものを素直に作らなければ、と思いました」(工藤さん)。
40年間にわたり愛されてきた「神明児童遊園」のタコは今、もういない。公園移設の際、老朽化を理由に取り壊されてしまった。壊される直前の昨年7月20日、品川区は近くの子供たちを招き「お別れ会」を開いた。「タコさん、思い出をありがとう」。子供たちの声に、関係者として立ち会った長久保さんの胸は熱くなった。
その一方で、こんなこともふと、思った。
「頭が付いていないままだったら、こんなに愛されることはなかったかもなあ」

前田屋外美術側の証言では「足立区役所」で一致しているようですね。ただこの記事ではそれが「いつ」なのか、明示されていません。なので、神明児童遊園との前後関係は不明です。品川区に再取材する記者さんはいないのでしょうか。

* * *

「40年間にわたり愛されてきた「神明児童遊園」のタコは今、もういない。」と記者は感傷的になっていますが、公園移設後に復元されることは決まっていたはず。「神明児童遊園のタコ滑り台は、道路整備にあわせて新設される公園に、来春にも復元される予定だ」という東京新聞(2007年9月8日夕刊)の乾いた筆致と対照的。ちなみに、読売新聞の感傷的な記事は男性記者、東京新聞の乾いた記事は女性記者の執筆です。

2 件のコメント:

  1. 結論はまだ出ていないんでしょうか(笑)。
    足立区の幹部(と言われている人)と品川区の担当者は
    移動があっただけで、実は同一人物でした。
    というオチはどうでしょう(笑)。

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  2. やっとかめさん

    その発想はありませんでした(笑)。
    スバラシイ。

    この件についての私の結論は、「いまのところ分からない」です。
    あ、イチョウマークについては結論出てるんですけどね。

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