2010年9月24日金曜日

公園遊具:タコ山のお値段


| ebisu | aug. 2010 |

タコのお値段はイカほどなのか。

以前にも少し記しましたが、もう少しデータがありましたので、メモランダム。

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1. 初期のタコ山

6月29日のエントリに、全国のすべり台などをスポッティングされている酉さんから価格についてコメントをいただきました(→こちら)。再掲します。

タコの山の価格のお値段の話題がありますが、以前気になって調べたことがありましたので、コメントさせていただきます。

昭和43年(1968年)、東京の都営野塩住宅にタコの山が設置されました。この時の記録が、団地自治会が出版した「25年の歩み」という冊子に残っています。
これによると、タコの山設置工事に、当時の価格で80万円かかったとありました。
この金額は、昭和40年代前半の、新入社員の年間所得とだいたい同じくらいではないかと思います。

昭和43年といえば、品川区神明児童遊園に親子のタコが設置されたころです。前回のエントリで、「タコの生みの親は品川区の職員」という東京新聞の記事を引用しましたが、その職員菅野善典さんの名前をググってみたところ、「品川経済新聞」に今年(2010年)3月、神明児童遊園にタコが再建されたときの記事がヒットしました。ここに最初のタコの価格が出ています。

新公園を設置したのは東京都。「公園が閉鎖されたのに遊具を再現することはあまりないのでは」と話すのは、旧公園のタコ滑り台で設計を担当した菅野善典さん。「当時は予算120万円ほど使って怒られたもの。今でもこうして子どもたちに愛されているならそれでも安いもの。設計冥利(みょうり)に尽きる」と顔をほころばす。

品川・二葉で「タコ滑り台」引っ越し祝う-道路整備に伴う公園移転で - 品川経済新聞

野塩住宅のタコは単体。これに対して神明児童遊園のタコは親子でかつ両者が雲梯でつなげられていましたから、80万円と120万円の差は説明できるかもしれません。

2. 最近のタコ山

2009年4月、北九州市小倉南区の志井公園にタコ滑り台が設置されました。このときの価格は約1千万円。

四月初旬、桜の花が舞うなか、北九州市小倉南区の志井公園に子供たちの笑い声が響いた。歓声の中心にあるのはピンク色のオブジェ。ゆるやかなカーブで形作られた彫刻のような遊具、通称「タコのすべり台」だ。公園のリニューアルにともない、同市が約一千万円の費用をかけて設置した。

『日経マガジン』2009年5月17日、22~23頁。

このタコは単体です。40年前のお値段の10倍以上ですね。

さらに、今年(2010年)3月、北九州市門司区の「和布刈公園」に設置されたタコの建設費は約4千万円!

関門海峡そばの門司区・和布刈(めかり)公園で、巨大なタコ形滑り台(高さ約6 メートル、幅約20メートル)の建設が進んでいる。近くに関門海峡めかり駅がある。観光トロッコ列車・潮風号に乗る親子連れらに楽しんでもらおうと、市が特産「関門海峡たこ」にちなんで建設しており、今シーズンの運行開始日の3月13日から供用を始める。関門海峡のタコをイメージした滑り台はピンク色のセメント製で、吸盤に見立てた突起物が並ぶ足部分が滑る台や階段になっている。施工は全国でタコ形滑り台を造っている前田環境美術(東京)で、同社が手がけた中では最大級という。 近くには地元の特産物を販売したり食事を提供したりする市場や、列車形の休憩所、あずま屋を備える芝生広場も市が整備し、滑り台と同時に開所する。総事業費は滑り台建設費約4000万円を含め約1億7500万円。

『読売新聞』2010年2月25日、西部朝刊5頁。

前田環境美術が手掛けた中でも最大級とのことですが、価格は志井公園の4倍! 画像検索してみていただければ分かると思いますが、ほんとうに大きい。またタコの足の水飲み場があったりして具象的。石の山の思想からはずいぶん遠くに行ってしまった印象です。

参考画像

『朝日新聞』2010年8月12日、北九州版朝刊19頁。


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新聞記事データベースをあたっていたら次のコラムがヒット。

(目の冒険)風景ザンマイ:11 変革か暇つぶしか 宮田珠己
街角の、他の人が気にもとめないようなモノを探し集める路上観察が、根強い人気である。
顔ハメ(穴に顔を入れる観光地の記念撮影用パネル)、オジギビト(工事現場の看板のおじぎをする人)、飛び出し坊や(道路に飛び出す子供が描かれた看板)などなど、多くのネタが本として出版されているし、それ以外にもインターネットを覗(のぞ)いてみれば、思いつく限りのありとあらゆる路上のモノがコレクションされている。私も、児童公園にあるタコのすべり台なんて見て回ったら面白いんじゃないか、と思ったら、とっくにやってる人がいた。
(以下略)

『朝日新聞』2007年6月10日、日曜版7頁。

「とっくにやっている人」とは価格についてコメントをいただいた酉さん(滑り台保存館主宰)のことを指しているに違いない。ちなみにコンクリート製公園遊具が好きにも関わらず私がここであまり取り上げないのは、酉さんをはじめとする偉大な先達を超える見込みがないからであり、水飲み場をスポッティングしているのはそれをやっている人がほとんどいないからという理由である。隙間が好きなのである(笑)。

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引用したコラムの日付は2007年。同時期に『散歩の達人』や『BRUTUS』でもタコ山が取り上げられている。神明児童遊園の大ダコの取り壊しに前後して、タコ山、タコ公園がさまざまなメディアに取り上げられていたようだ。

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