2009年12月2日水曜日

タイポロジック:活字のチカラを考える



活字ルネサンス
「タイポロジック─文字で遊ぶ、探る、創る展覧会」
2009年10月16日[金]―12月18日[金]
SPACE NIO(東京・大手町/日本経済新聞社2F)
http://www.typologic.net/


折り紙や組紐でアルファベットをつくるのが楽しい。
パソコンで入力した装飾文字をプリントして持ち帰れるのが嬉しい。
きっと子供が楽しい展覧会。
子供が楽しい展覧会は良い展覧会。
なのに、基本的に土日は休みなのだ。

*  *  *

会場で上映されていた大日本印刷の活版印刷の記録映像がとてもよかった。大日本印刷は2003年に活版印刷を終了している。映像は活字の原型制作から組版、校正(ゲラ)刷りまで、当時の制作工程を、古い雑誌ページの原稿をもとに再現する様子を追ったもの。

私が就職したのは1990年代初めだったが、現場はすでにすべて写植(電算・手動)になっており、残念なことに活字に触れる機会はまったくなかった。なので、活版印刷については、文献と制作物によって知るのみである。インテルとかクワタとか、言葉も役割も知ってはいたが、机上の知識。映像で見るまでは非常に漠然としたイメージでしかなかった。



どんな世界にも熟練は必要だが、活版印刷の現場もまた独特である。文字ごとに仕切りのついたボックスから原稿に合わせて活字を拾い出し、組んでゆく。そこまでは想像の範囲なのだが、表組み工程には圧倒された。罫線を必要な長さに切り、文字を均等に配置するためにスペースを調整する。ただ、電算写植のコーディングが、その場では仕上がりが分からない状態で進めてゆくことを考えれば、まだ実物感覚があるのかもしれないが、なんと手間の掛かることよ。



DTPでも活字のイメージを残した書体を利用可能だし、大日本印刷でも「秀英体」活字のデジタル化を進めているそうだ。ただ、「書体」が利用できると言うことと「活版印刷」とは、また別の問題。



活字で組む、印刷するという作業からは、文字というものがたんに伝達の為の記号であるだけではなく、モノとしてリアルに存在していることを感じる。



大日本印刷のサイトで、活版印刷の工程を写真で見ることができる。現場を体験してみたかったと思う。

探検!市谷工場活版現場 | DNP 大日本印刷株式会社
http://www.dnp.co.jp/shueitai/tanken/index.html

八木重吉 詩集『神を呼ぼう』

写真は八木重吉の詩集『神を呼ぼう』(新教出版、1950年)から。ことばも文字も美しい。美しい文字がうつくしいことばを伝える。

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